「人材育成」を脳科学の視点から見る

こんにちは。

本ブログ「管理職の悩み」の管理人の「悩める管理職」です。

 

一生懸命努力する人、なるべく楽をしようとする人、いろいろですが、

努力する人は立派で努力しない人は怠慢、

といった先入観があるような気がします。

 

また、努力とは気合い・根性・ヤル気の世界のもので、

科学が及ぶ世界ではないと考える人も、私を含め少なくないと思います。

 

そのような中で最近、私にとって衝撃的なお話に出会いました。

「努力できる人」と「努力できない人」は、

生まれつき遺伝的に決まっているのだそうです。

 

脳科学者の中野信子さんのお話を引用させていただき、

職場における「人材育成」に頭を悩ませる私たちにとって、

今後の重要な視点として認識する必要があると思い、

情報共有したく書かせていただきました。

 

ぜひ最後までお読みいただき、部下の育成にお役立ていただけたらと思います。

 

 

もくじ

1 「努力できる人」「努力できない人」は生まれつきのもの

2 実験事例.1 「努力できる人」「努力できない人」の違いについて

3 実験事例.2 褒められ方の違いによる成長差 その1

4 実験事例.3 褒められ方の違いによる成長差 その2

5 まとめ 目的を達成するプロセスは千差万別

 

 

中野信子 1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士。

脳や心理学をテーマに研究、執筆活動を行う。

科学の視点から、人間社会で起こりうる現象や

人物をわかりやすく読み解く語り口に定評がある。

 

 

1 「努力できる人」「努力できない人」は生まれつきのもの

「努力する」ということに対して多くの人の認識は、

もともと誰にでも備わっている才能の1つで、

それを個人ごとに発揮させる程度の違いによるもの、

ということではないかと思います。

 

勉強やスポーツ、何でもそうですが、

精神論的な部分で高めていこうとするのか、高める気がないのか、

というようなものと認識していました。

 

ですから、部下を育成しようとする時や評価する時、

努力するタイプの部下の方が期待度が高くなりがちです。

 

このように、科学的、定量的に話ができない分野のものだと思っていました。

 

そこで、脳科学者の中野信子さんによる、

「努力ができる才能とは遺伝的に決まっていて生まれつきのもの」

というお話に出会い、衝撃を受けたのです。

 

以降に興味深い実験を紹介してまいります。

 

2 実験事例.1 「努力できる人」「努力できない人」の違いについて

2種類の課題が用意されており、

どちらの課題を選ぶかによって

「努力出来る人」なのか「努力できない人」なのかを区別しようというものです。

そしてその時に双方の脳の中で何が起きているのかが根拠となっています。

 

課題①は、利き手の指で7秒間に30回ボタンを押す簡単な課題。

報酬は1ドル。

課題②は、利き手でない方の小指で21秒間に100回ボタンを押す難しい課題。

報酬は1~4.3ドルで、結果によって貰える報酬は変動する。

 

課題①を選んだ人の脳の中では、「島皮質」という部分に活性化が見られました。

「島皮質」は損得を勘定します。つまり、報酬が得られることが

確定しているのであれば努力するという性質です。

 

課題②を選んだ人の脳の中では、「線条体」という部分に活性化が見られました。

「線条体」は頑張って課題を達成し満足感を得た時などに活性化します。

報酬は確定していないが、頑張ってみよう!という、

「努力すること」そのものに喜びを感じるタイプの人です。

 

この実験では、どちらの課題を選ぼうかと決めるのは、

その人の脳の活性化する部分の違いによる、という事を示しています。

そしてこれは遺伝的なもので、生まれつき個々に決まっているものだそうです。

 

この実験結果から今後参考にするべき事は、

その部下が「努力できない人」だと察したら、

努力することを強要するのではなく、

「やるべきことだけを効率よくやればいい」と言う方が効果的なのだ、

という事です。

目から鱗ですね。

 

3 実験事例.2 褒められ方の違いによる成長差 その1

続いて2つ目の実験を見ていきましょう。

この実験は、子供への褒め方によって違った性格が形成される、という実験です。

 

テストの結果に対する褒め方により、2つにグループ分けをします。

グループ①は、「いい点数を取れたね。」といって点数について褒めてあげたグループ。

グループ②は、「前のテストより〇〇ができるようになったね。」といって

工夫したことについて褒めてあげたグループ。

 

次に、簡単な問題と難しい問題の2種類を用意し、どちらかを選ばせます。

結果は、グループ①は簡単な問題を選び、グループ②は難しい問題を選んだそうです。

 

この結果が物語ることは以下の通りです。

 

「いい点数を取れたね。」といって点数について褒めてもらった子供は、

いい点数を取れば褒めてもらえることが分かっているので、

確実に点数が取れるような簡単な問題を選ぶのです。

逆に言うと、点数が取れないような難しい問題には、

あえてチャレンジしなくなるのです。

 

一方、「前のテストより〇〇ができるようになったね。」といって

工夫したことについて褒めてもらった子供は、

また工夫することを褒めてほしいので、

未知の難しい問題にチャレンジするのです。

自分が今までできていなかったことが出来るようになったことを

見てほしいのです。

 

この結果を長期的に見た場合どうでしょうか。

簡単な課題だけ選択することを繰り返すより、

難しい事や未経験のことを選択してチャレンジしていく方が、

将来社会人となって生きていくことを考えると

望ましいのではないでしょうか。

 

褒め方によって、育まれる性格が違っていくことを踏まえ、

部下の育成に気をつけたいものです。

 

4 実験事例.3 褒められ方の違いによる成長差 その2

実験事例.2と同様に、

褒められ方の違いによって形成される性格にも影響する、という実験です。

子供たちに「頭がいいね。」と言って褒めたグループと、

特に何もしていないグループの2つを作ります。

 

そして全員に、どんなに優秀な子でもあまり良い点数がとれないような

難しい問題を与えます。

採点後に個別に答案用紙を返却し、

一人ずつみんなの前で自分の点数を発表させます。

 

この時、自分の答案用紙をみんなに見せる必要はなく、

自分の点数は自分しか知りません。

 

なんと、「頭がいいね。」と褒められたグループの子供のうち4割がウソをつき、

本当の点数よりも高い点数を発表したのです。

特に何もされていないグループの子供はみな、正直に自分の点数を告げました。

 

ウソをついた子供達は自分の点数が低いことを知られるのを非常に怖がってしまい、

苦しんだ末にこうした行動をとってしまったのでしょう。

さらにこれは大人になってからもそうした行動は引き継がれるそうです。

つまりそういう素地が子供のころに出来てしまったのだと言われています。

 

5 まとめ 目的を達成するプロセスは千差万別

話を振り返りますと、

「努力できる人」と「努力できない人」は生まれつき決まっており、

努力できない人に対して一生懸命努力させようとすることに、

あまり意味はないということです。

 

要するに努力することが目的なのではなく、

それができるようになる事が目的なので、

それを達成する方法は人それぞれ違っていていいはずです。

考えるべきことは、

「どうすれば目的を達成できるか」なのです。

 

また、褒められ方の違いにより性格形成にも影響を与える

という実験結果が示すように、

私たちは部下との日常的な会話の中身についてまでも、

注意が必要だと感じます。

 

中野信子さんはこのように仰います。

例えば山に登ろうとする場合、目的は頂上に到着する事です。

体を鍛えて一生懸命に努力して登ろうとする人もいれば、

できる限り自分は努力せずに頂上まで運んでくれる人を探そうとする人もいる。

どちらでも問題はなく、頂上へ到着することが達成できればよいのである。

1つの目的に対してさまざまなアプローチの方法があってもよい

ということを認識しなければならない。

 

また、努力すること自体は立派な事ですが、

「努力できない人」の評価を頭ごなしに下げるのは、

評価者の認識不足である可能性をふまえ、

慎重になる必要があることを付け加えておきます。

 

今回はこのあたりでご無礼させていただきます。

本記事が部下を育てる責任を持つ皆様のお役に立ちますなら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA