予測市場はビジネスをどう変えるのか――未来の予測を経営判断に利用する時代

フリーマン柴賢二郎の流儀

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予測市場はビジネスをどう変えるのか――未来の予測を経営判断に利用する時代

 

昨日の記事では、予測市場とは何なのか、そしてなぜ「みんなの予測」が未来を考えるための新しい情報になり得るのかを見てきた。

 

ここで、もう一歩踏み込んで考えてみたい。

 

予測市場には、「未来を予測して賭ける人」だけが必要なのではない。その反対側には、その予測を情報として利用したい人が存在する。

 

つまり、予測市場は「賭けの市場」であると同時に、「未来情報の市場」になる可能性があるのである。

 

たとえば、企業が新商品を発売するとする。

 

これまでは、過去の販売データ、顧客アンケート、専門家の意見、営業担当者の経験などを参考にして、売れ行きを予測してきた。

 

しかし、もし「この新商品が発売後3か月以内に1万個売れる確率は何%か」という予測市場が存在すればどうだろう。

 

社員だけではなく、顧客、投資家、業界関係者など、多くの人が自分のお金を使って予測する。その結果として形成された市場価格には、参加者が持っているさまざまな情報や期待が反映される。

 

もちろん、その予測が必ず当たるわけではない。

 

しかし、企業にとって重要なのは、「正解を知ること」だけではない。

 

未来について、現在どの程度の確率で起こりそうなのかを知ることなのである。

 

これは、経営判断を大きく変える可能性がある。

 

たとえばイベントを開催する企業なら、「来場者数は5000人を超えるか」という予測を利用できる。

 

予測市場で5000人を超える確率が高ければ、会場やスタッフ、商品の仕入れを増やす判断ができる。反対に確率が低ければ、過剰な準備を避けられるかもしれない。

 

原材料を大量に使用する企業なら、「半年後の原油価格」「小麦価格」「銅価格」などの予測も重要になる。

 

輸入企業であれば、為替の予測も経営に直結する。

 

「半年後に1ドル=○円になる可能性はどの程度なのか」

 

こうした情報がリアルタイムで得られるなら、仕入れのタイミングや価格設定、為替ヘッジなどについて、より柔軟な判断ができる。

 

さらに重要なのが、政治や政策に関する予測である。

 

選挙結果によって税制が変わる可能性がある。補助金制度が変更されるかもしれない。規制が強化される可能性もある。

 

企業にとっては、政策が「実際に変更された後」に対応するのでは遅い場合がある。

 

「変更される可能性が高い」と分かれば、その前から準備を始めることができる。

 

ここに、予測市場の大きな価値がある。

 

それは、未来を当てることではなく、未来に備えるための情報を提供することである。

 

そして、この考え方をさらに進めると、「情報そのものが商品になる」という世界が見えてくる。

 

予測市場に参加する人は、予測を提供する。

 

市場運営者は、その予測を集約する。

 

そして企業や投資家は、その情報を利用する。

 

つまり、予測市場は「予測する人」と「その予測を利用する人」を結びつける市場になるのである。

 

これは、従来の市場とは少し違う。

 

株式市場では、株式そのものが売買される。

 

商品市場では、商品が売買される。

 

一方、予測市場で価値を持つのは、まだ存在していない未来についての情報である。

 

「この商品はいつ売れるのか」

 

「このイベントには何人来るのか」

 

「この政策はいつ変更されるのか」

 

「この価格はどこまで上昇するのか」

 

こうした未来に関する情報が、価格という形で表現される。

 

もちろん、予測市場にも限界はある。参加者が少なければ市場価格が偏ることもあるし、参加者全体が同じ誤った情報に影響されれば、予測も外れる。また、政治や企業活動に関する予測では、制度や法律上の問題にも注意する必要がある。

 

それでも、「専門家一人の予測」から「多数の人間が持つ情報を市場で集約した予測」へと発想を変えることには、大きな意味がある。

 

経営者にとって本当に欲しいのは、未来を完全に言い当てる預言者ではない。

 

不確実な未来について、今ある情報から少しでも合理的に判断するための材料なのである。

 

そう考えると、予測市場は「賭け事」という一面だけでは語れなくなる。

 

そこには、未来を予測する人、予測を集約する市場、そして、その情報にお金を払って利用する企業や個人が存在する。

 

これまで「未来」は、誰にも売ることのできないものであった。

 

しかし、未来そのものではなく、未来についての集合知としての予測なら、情報として価値を持つ可能性がある。

 

予測市場が本当に大きく成長したとき、私たちは「モノを買う市場」だけではなく、「未来の情報を買う市場」を目にすることになるのかもしれない。

 

そして次に浮かぶのは、もっと現実的な疑問である。

 

では、予測市場を運営する側は、いったいどうやって儲けるのか。

 

次回は、「予測市場はどうやって儲けるのか」を考えてみたい。

 

 

 

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