フリーマン柴賢二郎の流儀
~そよ風に吹かれて、ゆっくりと歩いていこう~
世の中に起きている不思議なことや、独り言などをゆる~く書き綴る。
何の専門家でもない私が経済的自由を得て、人生のこと、世の中のこと、
幸せについてなど、一般庶民の目線で考える。
労働災害の昔と今――働く人は、本当に幸せになったのか。
かつての日本では、「働くこと」と「危険」は、今よりずっと近いところに存在していた。
工場では機械に巻き込まれ、建設現場では高所から転落し、鉱山では事故が起きる。安全設備も十分ではなく、「仕事とは、ある程度危険なものだ」という感覚さえ存在していた。
もちろん、現在でも労働災害はなくなっていない。しかし、長い時間をかけて日本社会は、「働く人が死んだり、傷ついたりすることを、仕方のないこととして受け入れない社会」へと変わってきた。
その変化は数字にも表れている。
厚生労働省によれば、2025年の労働災害による死亡者数は700人で、統計開始以来の過去最少となった。休業4日以上の死傷者数も13万5,333人である。
労働安全衛生法などの制度が整備され、安全教育や防護設備、作業手順の改善が進んだ結果である。
これは、間違いなく日本社会の大きな進歩である。
さらに、働く時間についても大きく変わった。
現在では原則として1日8時間、週40時間が法定労働時間とされ、時間外労働についても原則として月45時間、年360時間という上限が設けられている。
「どれだけ働かせてもよい」という時代から、「人間が働ける時間には限界がある」という考え方へ変化したのである。
企業側にとっても、安全は単なる道徳問題ではない。
労災保険料は原則として事業主が全額負担し、業種によって保険料率が定められている。また、一定の事業では災害の発生状況に応じて保険料率などを増減させる「メリット制」も存在する。つまり、安全対策は労働者を守るだけでなく、企業経営にも関係する問題なのである。
では、ここまで制度が整備された現在、働く人は昔より幸せになったのだろうか。
ここが難しいところである。
「安全になったこと」と「豊かになったこと」は、同じではないからだ。
昔の労働者は、危険な環境で長時間働かされることが多かった。
現代の労働者は、法律によってより強く守られている。
しかし、その一方で、住宅費、教育費、社会保険料、税金、物価など、生活に必要なお金は存在する。
賃金が上昇しても、物価がそれ以上に上昇すれば、生活は楽にならない。
実際、2025年の毎月勤労統計を見ると、名目賃金は上昇している一方、物価を考慮した実質賃金は伸び悩んでいる。つまり、「給料の額面は増えたのに、生活が楽になったとは感じにくい」という状況が起こり得るのである。
ここには、現代社会の非常に興味深い矛盾がある。
人間としての権利は、昔より確実に強くなった。
しかし、生活そのものが、必ずしも楽になったとは限らない。
だからこそ、これからの時代に必要なのは、「会社が自分を守ってくれる」という発想だけではないと思う。
法律や制度は重要である。
労災から身を守ることも、過剰な残業を拒否することも、適正な賃金を求めることも、労働者の当然の権利である。
しかし同時に、自分自身の人生を会社だけに依存しない視点も必要になってくる。
自分の仕事にはどれだけの市場価値があるのか。
今の収入で、将来の生活を維持できるのか。
会社以外にどのような収入源や資産を持てるのか。
そして何より、「自分は何のために働いているのか」を考えておくことである。
昔の労働者が求めていたものは、まず「安全」だったのかもしれない。
その後、「権利」が求められるようになった。
そして今、私たちが考えるべきなのは、その先にある「自分の人生を、自分で選べる自由」なのではないだろうか。
労働環境は確実に改善してきた。
だからこそ、その恩恵を受けながら、さらに一歩先へ進みたい。
「会社に守ってもらう人生」から、「制度を理解し、自分の力でも人生を守る人生」へ。
それは決して会社を信用しないという意味ではない。
むしろ、会社、法律、社会保障、そして自分自身の知識や資産。
いくつもの支えを持つことによって、人は初めて強くなれるのだと思う。
昔より安全になった社会だからこそ、次に私たちが目指すべきなのは、「ただ生き残ること」ではなく、「自分の人生を自分で選べること」なのかもしれない。
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