フリーマン柴賢二郎の流儀
~そよ風に吹かれて、ゆっくりと歩いていこう~
世の中に起きている不思議なことや、独り言などをゆる~く書き綴る。
何の専門家でもない私が経済的自由を得て、人生のこと、世の中のこと、
幸せについてなど、一般庶民の目線で考える。
働きやすい職場を作る「適材適所」の深層|部下の可能性を開花させる観察と撤退のマネジメント
働きやすい職場を作るには、どうすればよいのだろうか。
組織を受け持つ管理者であれば、誰もが一度は頭を抱えるテーマである。世の中には多様なマネジメント論があふれているが、その根底にあり、最も強力な手段となるのが「部下の適材適所を見極めること」に他ならない。
しかし、口で言うのは簡単だが、「適材適所を見極める」とは具体的に何を意味し、どのように実践すればよいのだろうか。
結論から言えば、手順は大きく分けて以下の5点に集約される。
1.先に自分の期待を押し付けない
2.本人の特性や可能性をよく観察する
3.業務の選択肢を広く提示する
4.合わなかったら迷わず別の業務に切り替える
5.成果を通じて自己肯定感を高めてあげる
これらは一見シンプルに見えるが、実践しようとすると管理者のエゴや恐れが邪魔をすることが多い。本記事では、このプロセスの本質について詳しく掘り下げていきたい。
- 自分の期待を押し付けてしまう罠
身近な例を挙げて考えてみたい。
近所の子どもがサッカーチームに入ったと聞いたとき、「自分の子どもには何をさせようか」と考えを巡らせる親の姿を思い浮かべてほしい。
「いまラグビーが話題だから、ラグビーをやらせようか」
「うちの子は背が高いから、バスケットボールかバレーボールが良いはずだ」
「自分が子どもの頃に野球を楽しんでいたし、教えられるから野球にしよう」
「自分は本当はピアノを習いたかったのに叶わなかった。だから子どもにはピアノを習わせたい」
こうした思考は、子育ての場において決して珍しいものではない。しかし、客観的に見れば、どれも親側の期待や都合、過去の未練を子どもに押し付けているに過ぎない。親が「どういう大人になってほしいか」と願うのは自然な情愛だが、子ども自身の主体性や適性を無視してしまっては本末転倒である。
この親子関係の構図は、驚くほど職場の「上司と部下」の関係に当てはまる。
組織の管理者は往々にして、自らの価値観や成功体験を、客観的な検証なしに組織の隅々まで反映させようとする。それはある意味で仕方のない面もある。組織の全責任を背負っているからこそ、すべての業務や人間を自分のコントロール下に置くことで安心感を得たいからだ。
子どもを自分の管理下に置いておく方が手間がかからず、予期せぬトラブルを避けられると感じる親の心境と全く同じである。
しかし、今回のテーマは「人」の配置である。人間は高い感情と主体性を持った生き物だ。管理という名のもとに自分のコントロール欲求を優先するのではなく、まずは「本人」の特性を最優先して観察する視点が不可欠となる。
「もう社会人なのだから、自分に合った仕事や興味のある業務は自発的に主張してくるべきだ」と考える人もいるかもしれない。だが、それは現場の現実を無視した早計な見方である。
若手社員の多くは目の前の業務をこなすだけで精一杯であり、職場全体の業務構造を俯瞰して把握できているわけではない。さらに、現在割り当てられている業務に不満や違和感を抱えていたとしても、それを上司に直接訴え出ることができる社員はごく稀である。
だからこそ、管理者側からアプローチする技術が求められるのだ。
- 本人を深く観察し、可能性の芽を探る
適材適所への第一歩は、先入観を捨てて本人を深く観察することから始まる。
具体的には以下のような行動が有効である。
・履歴書や過去の経歴を改めて細かく読み直す
・日常的な雑談を含め、対話の機会を意識的に増やす
・業務中の様子だけでなく、休憩時間や移動時の態度を見る
・負担の少ない小さな業務を試しに振り、その反応や処理スピードを見る
・何に取り組んでいるときに最も表情が活き活きしているかを観察する
このように立体的な視点を持って部下を見つめていくと、言葉には出ない適性が見えてくる。
作業を淡々とこなす職人肌なのか、全体をまとめて調整する管理者向きなのか。細かいチェック業務を苦にしないのか、数字やデータを分析することに喜びを感じるのか。じっくり観察を続ければ、必ずその人物固有の強みや傾向のヒントがつかめるはずだ。
- 出会いの機会を作るマッチングの工夫
本人の傾向が見えてきたら、次は職場内の業務選択肢をオープンにし、マッチングの機会を与えることが重要になる。
組織の中にどのような業務が存在し、誰がどのように取り組んでいるのかを、可視化して提示してあげる必要がある。自分自身の潜在的な才能に気づいていない人は非常に多い。実際に足を踏み入れて経験してみなければ、本当にその仕事が自分に合っているかどうかは誰にも分からないからだ。
本人が少しでも興味を示した業務があれば、まずは短期間でも取り組ませてみる。一発で最適な業務に巡り会えることは珍しく、一度や二度の試行錯誤は当然必要なプロセスであると捉えておきたい。
- 「合わなかったらすぐ切り替える」は組織の大きなメリット
実際にやらせてみた結果、以下の状況が発生することは多々ある。
・取り組んでみたものの、イメージと違ってパフォーマンスが出なかった
・ある程度の期間は成果が出たが、次第に他の業務への関心が強くなった
こうした場面に直面したとき、管理者が取るべき行動は一つだけだ。「迷わずすぐに別の業務へ切り替える」ことである。
多くの管理者はここで躊躇する。「せっかく業務調整をしてあげたのに」「本人がやりたいと言ったのだから初志貫徹させるべきだ」といったプライドや執着が邪魔をするからだ。
しかし、向いていない業務や意欲を失った業務をダラダラと続けさせることは、本人にとっても組織にとっても利益を生まない。
すぐに切り替えたとしても、それまでに投じた時間や経験が無駄になるわけではない。不向きだった業務を一度でも経験した人間は、以下のような貴重な資産を手に入れている。
・経験に基づき、後輩へ具体的なアドバイスや指導ができるようになる
・他部署が人手不足などのピンチに陥った際、即戦力としてフォローに入れる
・複数の業務プロセスを知ることで、組織全体を俯瞰した課題解決ができるようになる
多角的な経験を積んだ人材は、組織としての柔軟性と対応力を高めてくれる。そして何より、「ダメなら次を試せばいい」という環境は、本人の中に「挑戦しても見捨てられない」という強い安心感と自信を育むことになる。
- 自己肯定感が高まり、組織のパフォーマンスが跳ね上がる
自分の強みが活かせる場所を見つけた人間は、「自分は組織の役に立っている」「ここに存在価値がある」という実感を得る。この実感が本人の自己肯定感を大きく高める。
自己肯定感が高まった社員は、指示待ちをやめて主体的に動くようになり、周囲に対しても寛容になるため、職場の人間関係は劇的に改善する。
ここで大切なのは、「苦手な領域を克服させよう」としないことだ。明らかな欠陥でない限り、個人の「凹(谷)」を埋めさせる教育は極めて効率が悪い。苦手なものを標準並みに引き上げるには、得意なものを伸ばす何倍ものエネルギーを消耗する。苦痛を感じながら嫌々取り組ませても、高い成果など望むべくもない。
短所を埋めることに時間を使うくらいなら、尖った長所をさらに伸ばす「山を高くする」アプローチに集中すべきである。
- おわりに
一人ひとりの特性を見極め、それに合わせた業務を提供する。言葉にすればシンプルだが、これを継続して実行していくことが、結果として最も「働きやすい職場」を作り出す。
人は、自分が好きなことや得意なことに夢中で取り組んでいるときにこそ、最大の成長と幸福感を感じる。
今回解説したアプローチを完璧にこなすのは容易ではないかもしれない。しかし、管理者が「自分の期待を押し付ける管理」から「部下の特性を観察し活かす管理」へと視点を少し変えるだけで、組織の空気は一変するはずだ。雰囲気の良くなった職場では、自ずと生産性やパフォーマンスも向上していく。
本記事が、日々組織のマネジメントに心を砕いている管理者の皆様にとって、次の一歩を踏み出すヒントとなれば幸いである。

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