フリーマン柴賢二郎の流儀
~そよ風に吹かれて、ゆっくりと歩いていこう~
世の中に起きている不思議なことや、独り言などをゆる~く書き綴る。
何の専門家でもない私が経済的自由を得て、人生のこと、世の中のこと、
幸せについてなど、一般庶民の目線で考える。
予測市場はどうやって儲けるのか――未来を予測しなくても儲かる「市場の運営者」
前回は、「予測市場とは何なのか」という話をした。
簡単に言えば、予測市場とは、これから起こる出来事について、人々が「起こると思う」「起こらないと思う」と予測し、その予測を売買する市場である。
そこで、今回は一つの疑問について考えてみたい。
「参加者が予測してお金を稼ぐのは分かった。それでは、その市場を運営している会社は、どうやって儲けているのだろうか」
これは考えてみると、とても面白い問題である。
実は、予測市場の運営者は、自分で未来を予測して勝負する必要がない。
ここが最大のポイントである。
たとえば、ある予測市場で、「明日の東京の気温は30度を超えるか」という市場があったとする。
ある人は「超える」と考える。
別の人は「超えない」と考える。
そこで、それぞれが自分の予測に基づいて売買する。
このとき、市場を運営している会社は、どちらが正しいかを予測する必要がない。
参加者同士が売買できる場所を用意し、その取引を成立させればよいのである。
そして、取引が行われるたびに、一定の手数料を受け取る。
つまり、
参加者は未来を予測して儲ける。
運営者は参加者が売買することで儲ける。
という違いがある。
これは、商売に例えると分かりやすい。
魚を売っている人は、魚の値段が上がるか下がるかを予測して商売しているわけではない。
「魚を売りたい人」と「魚を買いたい人」が集まる場所を作り、その売買を成立させることで商売が成り立つ。
予測市場も、それに似たところがある。
運営者にとって重要なのは、「未来を当てること」ではなく、「なるべくたくさんの人が売買する市場を作ること」なのである。
では、どうすれば多くの人が集まるのだろうか。
ここで重要になるのが、「いつでも買える」「いつでも売れる」という環境である。
たとえば、自分が「明日の気温は30度を超える」と思って買いたいと思っても、売ってくれる人が誰もいなければ取引できない。
反対に、「売りたい」と思っても、買ってくれる人がいなければ売ることができない。
そこで運営者は、「この価格なら買います」、「この価格なら売ります」という注文を出してくれる人を増やそうとする。
そうすれば、ほかの参加者も安心して売買できる。
そして、売買しやすくなれば、さらに参加者が増える。
参加者が増えれば、取引も増える。
取引が増えれば、運営者が受け取る手数料も増える。
つまり、
人が集まる
↓
売買しやすくなる
↓
取引が増える
↓
手数料が増える
という循環を作ることが、運営者にとって非常に重要なのである。
実際、米国の予測市場「Kalshi」では、参加者が予測を売買するときに手数料がかかる仕組みになっている。
つまり、Kalshi自身が「未来はこうなる」と賭けているのではない。
人々が未来について売買する場所を提供し、その取引から手数料を得ているのである。
これは非常に合理的な商売である。
たとえば、一人の参加者から100円の利益しか得られなくても、100万人が何度も取引すれば、非常に大きな金額になる。
だから運営者にとっては、「一人から大きく取る」よりも、「できるだけ多くの人に、何度も利用してもらう」ことの方が重要になる。
この考え方は、証券取引所などにも似ている。
証券取引所自身が「明日、株価が上がる」と予測しているわけではない。
株を買いたい人と売りたい人が集まる場所を作り、その取引を支えることで市場を成り立たせている。
予測市場も、これと似た方向へ発展していく可能性がある。
そして、もう一つ面白い収益源がある。
それが、「市場から生まれる情報」である。
予測市場では、参加者が「この出来事は起こりそうだ」「いや、起こらないだろう」と考えて売買する。
その結果として、「現在、市場ではこの出来事が起こる可能性を60%くらいと考えている」といった数字が生まれる。
これは単なる数字ではない。
そこには、実際にお金をかけて未来を予測している人々の判断が反映されているからである。
企業や研究者などにとっては、こうした情報が役に立つ場合がある。
そのため将来的には、予測市場の運営会社が、こうした市場のデータを企業などに提供するビジネスも考えられる。
たとえば企業が、「現在、人々はこの出来事が起こる可能性をどのくらいと考えているのか」という情報を知りたい場合、そのデータを利用できるようにするのである。
ここまで考えると、予測市場は単なる「未来を当てるゲーム」ではないことが分かってくる。
参加者は未来を予測している。
しかし運営者が本当に作っているものは、「未来について人々が考え、売買する場所」なのである。
そして、その場所に人が集まれば集まるほど、運営者の収益も大きくなる。
ここが予測市場というビジネスの非常に面白いところである。
カジノの場合、基本的には客が負ければ運営者が儲かる。
しかし予測市場では、必ずしもそうではない。
運営者にとって大切なのは、参加者が勝つか負けるかではなく、参加者同士が活発に売買することである。
だから、運営者は参加者と未来の予測で勝負する必要がない。
むしろ、「未来を予測したい人が、何度でも集まってくる場所を作る」ことこそが、最大の仕事なのである。
これは、インターネット時代のビジネスを考えるうえでも興味深い。
自分自身が商品を作って売るのではなく、人と人が取引する場所を作る。
そして、その場所で取引が行われるたびに、少しずつ収益を得る。
一回の取引では小さな利益でも、取引が何百万回、何千万回と積み重なれば、大きなビジネスになる。
だから、「元締めは何%取るのか」という最初の疑問に対する答えは、単純な数字だけではない。
本当に重要なのは、「何%取るか」ではなく、「どれだけ多くの人が、どれだけたくさん取引する市場を作れるか」なのである。
参加者は未来を当てようとする。
一方、運営者は未来を当てようとはしない。
未来を予測したい人たちが集まる場所そのものを、ビジネスにしているのである。
この仕組みがさらに大きくなったとき、予測市場は一体どこまで広がるのだろうか。
「未来を当てる場所」から、「社会が未来をどう見ているのかを知る場所」へ変わっていく可能性もある。
次回は、この予測市場が今後どこまで拡大する可能性があるのかを考えてみたい。
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