「外国国債不要論」とインデックス投資の本質(継続のためのマインドセット)

フリーマン柴賢二郎の流儀

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「外国国債不要論」とインデックス投資の本質(継続のためのマインドセット)

 

投資を始めると、必ず目にするのが「分散投資」という言葉だ。

特に伝統的なポートフォリオでは、「国内株式・外国株式・国内債券・外国債券」の4資産に均等に分散するのが王道とされてきた。

 

しかし、個人投資家の間で根強い支持を集める考え方に「外国国債不要論」がある。

 

これは、投資評論家の故・山崎元氏が提唱し、水瀬ケンイチ氏の著書『彼はそれを賢者の投資術と言った』などでも広く知られるようになった論理だ。

 

一見すると「分散を減らすのは危険なのではないか?」と思えるかもしれない。

しかし、その裏には個人投資家にとって極めて合理的で実用的なロジックが存在する。

 

本記事では、外国国債不要論の背景にある仕組みや、世界最大の機関投資家GPIFとの違い、そして最終的に投資で成果を出すために最も重要な「航路を守る」マインドセットについて、分かりやすく解説したい。

 

■ 外国国債不要論とは? 核心にあるシンプルなロジック

 

外国国債不要論の結論はシンプルだ。

 

「リスクを取ってリターンを狙うなら株式(全世界株式や先進国株式など)を持ち、資産を守るための安全資産は円建ての日本国債や預金で持てば十分である。その中間に位置する外国国債をわざわざ組み入れる必要はない」

という考え方である。

 

なぜ、分散投資の基本とされる外国国債をポートフォリオから外しても問題ないのか。

主な理由は以下の3点に集約される。

 

為替リスクとリターンの不釣り合い

為替ヘッジをかけない外国国債を買う場合、常に為替変動のリスクがつきまとう。

 

・株式のリスク: 価格変動は大きいが、企業の成長に伴う高い期待リターン(リスクプレミアム)がある。

・外国国債のリスク: 為替の変動によって価格が大きく動くにもかかわらず、債券自体の期待リターンは低い。

 

つまり、為替リスクという大きなリスクを取っている割に、得られるリターンが見合わないという「非効率な状態」になりやすい。

リスクを取って資産を増やしたいのであれば、株式にリスク枠を集約した方が圧倒的に効率的だと言える。

 

為替ヘッジ付き債券に潜むコスト問題

「それなら、為替リスクを消すために『為替ヘッジ付き』の外国債券を選べば良いのではないか」という疑問が浮かぶ。

 

しかし、ここにも落とし穴がある。

為替ヘッジを行うには「金利差相当分」のヘッジコストが発生する。

日本の金利より相手国の金利が高い場合、その差額がコストとして引き去られるため、ヘッジ後の実質的な利回りは日本国債と大差ないレベルまで低下してしまうのだ。

 

わざわざ運用管理費用(信託報酬)やヘッジコストを支払って海外の債券を買う合理性は、極めて乏しいと言わざるを得ない。

 

個人には「個人向け国債(変動10年)」という強力な味方がある

 

資産を守るための「無リスク資産(安全資産)」として、日本の個人投資家には極めて恵まれた選択肢がある。

それが「個人向け国債(変動10年)」や元本保証の銀行預金(預金保険制度の範囲内)だ。

 

個人向け国債(変動10年)には、以下のような破格のメリットがある。

 

・国が元本と利払いを保証している(元本割れしない構造)

・将来、金利が上昇した場合には適用金利も上がっていく

・0.05%の最低金利保証がある

 

価格変動リスクや為替リスクを一切負わずに、金利上昇局面にも追従できる安全資産が身近にある以上、わざわざリスクを取ってまで外国の債券を買う必要がないのである。

 

■ なぜGPIFは外国債券を25%も持っているのか?

 

ここで必ずと言っていいほど出てくるのが、「世界最大級の公的年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、外国債券を25%も組み入れているじゃないか」という反論だ。

 

プロ中のプロが外国債券を入れているのに、個人が不要と言い切れるのだろうか?

 

結論から言えば、GPIFと個人投資家では「置かれている前提条件」が根本的に異なる。プロの真似をする必要がない理由は2つある。

 

理由1:資金規模が大きすぎる(市場インパクトの回避)

 

GPIFが運用する資金は200兆円を超える。

これほど巨大な資金を「日本の国債」だけに集中させると、国債市場の需給を歪め、買いすぎによって市場の金利を不自然に押し下げてしまう。

 

そのため、市場規模が極めて大きい米債などの海外市場へ資金を分散せざるを得ないという「物理的限界」が存在する。

一方で、個人投資家の資金規模で市場に影響を与えることなどあり得ないため、この制約は関係ない。

 

理由2:個人向け国債を買えない制度的制約

 

前述した最強の安全資産「個人向け国債」は、文字通り個人のみを対象とした金融商品だ。

GPIFのような法人・機関投資家は購入することができない。

 

機関投資家は市場で売買される通常の国債(固定金利)を買うしかないため、国内金利が上昇した際の下落リスクをダイレクトに受ける。

そのため、海外の債券を入れてリスクを確率論的に分散させる必要があるのだ。

 

つまり、GPIFが外国債券を持つのは「そうせざるを得ない事情があるから」であり、何のリスクも制約もない個人投資家がそれを模倣する合理性はない。

 

■ この考え方をどう受け止めるべきか?

 

ここまで外国国債不要論のロジックを説明してきたが、投資の世界において、理論上の効率性と個人の感情(ストレス)は別物である。

 

「株式ほどの大きな値動きは耐えられないが、マイルドな値動きで資産を分散させたい」「伝統的な4資産分散のほうが精神的に落ち着く」という人にとって、外国債券を組み入れることは心理的な安心感につながる。

 

また、将来の相場環境(歴史的な超円安の進行や海外高金利の長期化など)によっては、結果的に外国債券を持っていた方がプラスに働いたという時期も生じ得る。

 

大切なのは、「外国国債不要論は、資産管理をシンプルにしコストを徹底的に削ぎ落とすための極めて強力な1つの選択肢である」と理解し、自分のリスク許容度や好みに応じて選ぶスタンスである。

 

■ 手法よりも遥かに重要な「航路を守れ!」というマインド

 

外国国債を入れるか否かといったポートフォリオの構築(手法)も重要だが、水瀬ケンイチ氏をはじめとするインデックス投資の先人たちが口を揃えて強調するのが「航路を守れ!(Stay the course)」というマインドセットだ。

 

この教えは、名著『インデックス投資とは何か』などの著者であり、バンガード創業者であるジョン・C・ボーグル氏の言葉だが、インデックス投資において最も難しく、かつ最大の成否を分ける核心だと言われている。

 

手法が「自動車の設計図」だとすれば、マインドは「悪天候でもハンドルを握り続けるドライバーの精神力」である。

どんなに優れたポートフォリオを組んでも、維持できなければ意味がない。

 

暴落局面で試される「人間の本能との戦い」

 

資産が30%〜50%も減少するような暴落期(リーマンショックやコロナショック級)が訪れると、人間の本能として「これ以上減る前にすべて売り払って逃げ出したい」という強い恐怖が襲ってくる。

 

逆に、空前の株高が続くと「もっとリターンの高い話題の個別株や暗号資産に乗り換えた方が良いのでは」という欲が生じる。

 

投資で成果を出すために不可欠なのは、こうした恐怖や欲望に流されず、最初に決めた投資方針を淡々と維持し続けることだ。

どれほど理論的に正しい手法であっても、市場から途中撤退してしまえばすべての努力は無に帰す。

 

インデックス投資の最大の敵は「退屈さ」

 

インデックス投資は、一度設定を終えてしまえば日常的にやるべき作業がほとんど存在しない。

 

日々流れてくる「この株で〇〇倍になった」「今のポートフォリオは時代遅れだ」といったニュースに触れると、自分も何か売買しなければならないような焦り(何かしたい病)が芽生える。

 

しかし、焦って頻繁に売買を繰り返せば、手数料や税金がかさみ、最終的なパフォーマンスは市場平均を下回っていく。

「退屈さに耐え、ただ何もしないことを選択し続ける」ことこそが、長期投資家にとって最大の難所なのだ。

 

航路を守るための「環境づくり」

 

「航路を守る」とは、精神論だけで耐え忍ぶことではない。

あらかじめ動揺しない仕組みを作っておくことが重要なのである。

 

・生活防衛資金を確保し、無くなっても困らない余剰資金だけで運用する

・暴落しても夜ぐっすり眠れるリスク許容度の範囲内に留める

・自動積立を設定し、日々の株価チェックを減らして感情を挟まないようにする

 

手元の安全域(円建ての安全資産)がしっかりと確保されていれば、株式市場がどれほど荒れ狂おうと、静かに波が去るのを待つことができる。

 

■ まとめ

 

「外国国債不要論」は、コストと為替リスクの観点から個人の投資効率を極限まで高めるための非常に理にかなったアプローチだ。

 

しかし、投資の成否を決める最後のピースは、手法の優劣ではなく「そのポートフォリオを何十年も持ち続けられるか」という投資家のマインドにかかっている。

 

リスクを取る部分は株式で力強く増やし、守る部分は円建ての安全資産で徹底的に固める。

そして一度決めた航路をブレずに進み続ける。

 

情報が溢れかえる現代だからこそ、自分の選択に納得感を持ち、静かに「航路を守る」姿勢こそが、個人投資家が資産形成を成功させるための最大の鍵となるだろう。

 

 

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