66歳の父はなぜ息子を殺さなければならなかったのか――支援国家・日本に残る「孤立」の現実

フリーマン柴賢二郎の流儀

~そよ風に吹かれて、ゆっくりと歩いていこう~

世の中に起きている不思議なことや、

ふと浮かんだ疑問などをゆる~く書き綴る。

何の専門家でもない私が経済的・時間的・人間関係の自由を得て、

人生のこと、世の中のこと、幸せについてなど、

一般庶民の目線で考える。

 

66歳の父はなぜ息子を殺さなければならなかったのか――支援国家・日本に残る「孤立」の現実

 

2026年5月、千葉県成田市で大変痛ましい事件が起きた。

 

66歳の父親が、同居する小学6年生の息子を殺害したとして逮捕されたのである。

報道によれば、父親は「首を絞めて殺した」と容疑を認めており、「お金がなく将来を悲観していた」「息子を一人で残せなかった」と供述しているという。

父子は長年二人暮らしを続けていたとみられ、警察は無理心中を図った可能性も含めて捜査している。

報道では息子に知的障害があったと伝えられている。

 

この事件を知ったとき、多くの人は「なぜ支援を受けなかったのか」と感じたかもしれない。

 

確かに現在の日本には、障害児やその家族を支えるための制度が数多く存在する。

障害福祉サービス、特別支援教育、相談支援、放課後等デイサービス、ショートステイ、生活保護など、過去と比べれば支援の網は大きく広がっている。

 

それにもかかわらず、なぜこのような結末になってしまったのだろうか。

 

制度はあっても「届かない支援」がある

 

私はこの事件の本質は、制度の不足ではなく「孤立」にあると考える。

 

福祉制度は存在していても、その存在を知らなかったり、利用方法が分からなかったり、あるいは助けを求める気力そのものを失ってしまったりする人は少なくない。

特に高齢の親が障害のある子どもを育てている家庭では、「自分が何とかしなければならない」という責任感が非常に強い。

 

周囲に迷惑をかけたくない。

役所に相談するのは気が引ける。

他人に家庭の事情を知られたくない。

 

そんな思いから、問題を抱え込み続けてしまうのである。

そして孤立は徐々に人の判断力を奪っていく。

 

客観的に見れば利用できる制度があったとしても、本人の中では「もうどうにもならない」という絶望感が支配してしまうのである。

 

「親亡き後問題」の重圧

 

障害児・障害者家庭では以前から「親亡き後問題」が大きな課題とされてきた。

 

自分が元気なうちは世話ができる。

しかし自分が病気になったら。

介護が必要になったら。

そして自分が亡くなったら。

残された子どもはどうなるのか。

 

この不安は健常児を育てる家庭以上に深刻である。

今回の父親も66歳であった。

一般的にはまだ高齢者とは言えない年齢かもしれない。

しかし無職であり、妻を亡くしていたとも報じられている。

収入や将来への不安、子育てへの責任感が重なり、「自分がいなくなったらこの子は生きていけない」という思いに追い詰められていった可能性は十分に考えられる。

 

もちろん、どのような理由があっても殺人が許されるわけではない。

しかし、事件の背景を理解しなければ同じ悲劇は繰り返される。

 

日本社会が向き合うべき課題

 

この事件を個人の問題として終わらせてはいけない。

 

日本は少子高齢化が進み、障害のある子どもを高齢の親が支える家庭も増えている。

福祉制度を整備するだけでは不十分である。

本当に必要なのは、孤立した家庭を早期に見つけ出す仕組みだ。

学校、自治体、福祉事業者、地域住民が連携し、「助けてください」と言う前に支援の手を差し伸べることが求められている。

 

実際、今回の事件も発覚のきっかけは小学校の校長による通報であった。

学校が異変に気付かなければ、さらに発見が遅れていた可能性もある。

 

支援制度は最後の安全網である。

しかし本当に人を救うのは、人と人とのつながりなのかもしれない。

 

おわりに

 

この事件は、障害のある子どもを持つ家庭だけの問題ではない。

介護、貧困、ひとり親家庭、引きこもりなど、さまざまな形で孤立する人々が日本には存在する。

制度があることと、救われることは必ずしも同じではない。

 

今回亡くなった少年には、本来ならこれから長い人生が待っていた。

そして父親にも、誰かに助けを求める道があったはずである。

 

私たちはこの事件を単なる悲しいニュースとして消費するのではなく、「なぜ孤立したのか」「社会は何ができたのか」を考え続ける必要がある。

それこそが、亡くなった少年へのせめてもの供養になるのではないだろうか。

 

 

 

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