為替リスクを侮るな——長期投資家が知るべき通貨変動の本質

フリーマン柴賢二郎の流儀

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為替リスクを侮るな——長期投資家が知るべき通貨変動の本質

 

 

海外資産に投資する限り、避けて通れないのが「為替リスク」である。

株価が上がっても為替が逆方向に動けば利益は吹き飛び、逆に株価が横ばいでも為替が味方すれば利益が膨らむ。

にもかかわらず、多くの投資家が為替を“副次的なもの”として軽視しがちである。

しかし現実には、リターンの相当部分を為替が左右することも多く、資産形成の成功・失敗を分けるほどの重要性を持つ。

本稿では、為替リスクを投資家の視点で分かりやすく整理していきたい。

 

■ 為替リスクとは何か

 

為替リスクとは、外貨建て資産を円に換算した際、為替レートの変動によって評価額が上下するリスクのことである。

海外ETF、外国株、海外債券、外貨預金、そして旅行用の両替まで、すべてが為替の影響を受ける。

ドル円が1ドル=100円から150円へ動くのか、その逆なのか。

それだけで損益は大きく変わる。

 

投資家にとって重要なのは、「株価の変動」と「為替の変動」はまったく別の要因で動く、という点である。

経済成長、金利差、金融政策、地政学リスク、資金フローなど、為替は独自のドラマを持つ。

株式市場が堅調であっても、為替が円高に振れればリターンは薄まる。

 

■ 円安は日本人投資家にとって追い風

 

直近の円安局面は、多くの海外投資家にとって追い風であった。

円が弱くなれば、外貨建て資産を円換算したときの価値は自動的に膨らむ。

海外株が横ばいでも、為替だけで含み益が発生することは珍しくない。

 

例えば1万ドルの資産を保有していた場合、

・ドル円100円 → 資産は100万円

・ドル円150円 → 資産は150万円

 

ドル建ての価格が動かなくても、円安だけで50万円の差が生まれる。

長期投資家にとって、これは非常に大きなプラス材料である。

 

■ 逆に円高はリスクとなる

 

一方、円高になると円換算の価値は目減りする。

株価が上がっていても、円高幅がそれ以上なら円ベースではマイナスになることさえある。

 

長期投資を続けるうえで理解すべきなのは、円高局面が「必ず来る」ということである。為替はサイクルで動き、永遠に円安が続くわけではない。

金利差が縮小したり、世界経済の不確実性が高まると、円は“安全資産”として買われやすい傾向がある。

 

為替を読むことはプロでも難しい。

しかし、「変動する」という事実そのものがリスクであり、かつチャンスであると理解することが重要だ。

 

■ 為替リスクは本当にリスクなのか

 

投資家の視点で見れば、為替リスクは“リスクでありリターンでもある”。

事実、円安局面が長引けば日本人投資家は大きく資産を伸ばす。

過去10年の米国株投資家のリターンが高かったのは、米国株の上昇だけでなく、円安トレンドが重なった恩恵によるところが大きい。

 

つまり、為替リスクは「恐れる」だけの存在ではなく、「味方につければ強力なエンジン」になる。

これを理解しているかどうかで投資成果は大きく変わる。

 

■ ではどう対策すべきか

 

為替リスクに対して取るべき行動は、次の3つに整理できる。

 

  • 長期で保有する

短期では為替は読めない。

しかし長期では株価の上昇力が上回り、為替の上下が平均化される可能性が高い。

特に全世界株やS&P500のような長期上昇資産では時間が最大の味方となる。

 

  • 為替ヘッジ商品を必要に応じて使う

「為替の影響を極力排除したい」「円高局面でのダメージを抑えたい」という場合は、ヘッジ型の投信やETFを選ぶ。

ただしヘッジコストが発生し、長期では非ヘッジより成績が落ちる傾向がある。

目的が明確な人だけが利用すべきである。

 

  • 通貨の分散を意識する

ドルだけでなく、ユーロや他通貨への分散を行えば、為替変動の偏りを軽減できる。

結果としてポートフォリオの安定性が増す。

 

■ 為替は「読まない」よりも「付き合う」もの

 

個人投資家が為替を的確に予測することは不可能であり、プロですら長期的な予測は外す。

したがって、為替は“読む”よりも“付き合う”ものだと割り切るべきである。

 

長期的な視野に立てば、株式の成長力が為替のノイズを吸収し、最終的にはプラスへ収斂(しゅうれん:ばらついていたものが次第に1つの方向や水準へまとまっていくこと)しやすい。

為替変動を利用しつつ、過度に恐れず、淡々と積み上げ続ける。

その姿勢こそが、長期投資家にふさわしい為替との向き合い方である。

 

 

 

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