耕作放棄地は“負”か“資源”か──投資家が注目すべき未来図

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耕作放棄地は“負”か“資源”か──投資家が注目すべき未来図

 

耕作放棄地問題はなぜ深刻化しているのか

 

日本の農地は今、静かに、しかし確実に変化を迎えている。

その象徴が「耕作放棄地」である。

耕作放棄地とは、農地として利用するつもりがあるにもかかわらず、1年以上使われておらず、再び作付けする見込みが低い土地のことを指す。

近年、この耕作放棄地が全国で拡大し続けており、農業の衰退だけでなく、地域の景観や治安、災害リスクにも影響を及ぼしている。

 

農林水産省によると、耕作放棄地は約42万ヘクタールに達しており、これは九州の半分ほどの広さに相当する。

農家の高齢化、後継者不足、採算の取れない農業構造が複合的に重なり、この問題は加速しているのである。

 

耕作放棄地が生まれる背景

 

耕作放棄地の背景には、いくつかの構造的要因がある。

 

第一に、高齢化と後継者不足である。

農家の平均年齢は67歳を超えており、体力的に耕作を続けることが難しくなる一方で、子世代は都市へ流出し農地を引き継がない。

結果として「使いたくても使えない土地」が増えていく。

 

第二に、農地の所有者構造が複雑な点が挙げられる。

相続によって農地が細かく分散し、所有者が全国に散らばるケースが多い。

中には相続登記がされず、所有者が誰なのかすら分からない「所有者不明土地」となってしまう農地もある。

こうなると、貸したくても貸せず、活用が困難になる。

 

第三に、農業を続ける経済的メリットの低さがある。

競争力の弱い小規模農家は、農業を続けても利益になりにくい。

特に中山間地域では物流コストが高く、農業収入と生活コストが見合わない。

 

これらが重なり、農地が静かに、しかし確実に放棄されていくのである。

 

法整備の問題と行政の限界

 

耕作放棄地問題を語る上で、法制度の複雑さも避けて通れない。

日本の農地制度は「農地は農業者が所有し耕作する」という思想が強く、農地の転用や売買には厳しい制限がある。

これは戦後の農地改革以来続く仕組みであり、耕作権を守るという点では重要であるが、現代の状況には合わない部分も多い。

 

行政も早期の対応に乗り出しているが、所有者不明の農地の管理は極めて困難である。

手続きの煩雑さ、所有者の捜索、合意形成の長期化など、時間と費用がかかる。

結果として、手が付けられないまま雑草が生い茂り、獣害が増え、周辺住民の生活に影響を与える状況が生まれている。

 

近年は「所有者不明土地法」「相続登記の義務化」などの法改正が進んでいるが、実際に農地を活かすためには、地域の合意形成と民間の活力が不可欠である。

 

耕作放棄地をどう活かすのか

 

耕作放棄地を活かす道は多様である。

従来の農地としての再利用に加え、近年は次のような用途が注目されている。

 

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)

農地の上に太陽光パネルを設置しつつ作物を栽培する。農地としての機能を維持しつつ、収益性を高められる。

 

再生可能エネルギー用途(メガソーラー等)

農地転用が必要だが、地域との合意形成さえできれば安定収入源としての活用が可能。

 

観光農園や体験型農業

農業体験やレンタル農園として活用すれば、都市住民のニーズに応えられる。

 

企業の農業参入(農地利用方式)

農地所有ではなく、地域と連携して経営受託する形で参入するケースも拡大している。

 

耕作放棄地は「負の遺産」ではなく、活用次第で地域の未来を変える資源にもなり得るのである。

 

投資家として何を期待できるか

 

投資家の視点では、耕作放棄地問題は「社会課題でありながら投資機会」という側面を持つ。

期待できるポイントは以下のとおりである。

 

再エネ関連の投資機会の拡大

農地法の緩和や営農型太陽光の拡大により、農地を活かしたエネルギー事業が成長分野となっている。

 

地域活性化ファンドへの投資

自治体や企業が運営する地方創生型ファンドでは、農地再生事業が対象となるケースも多い。

 

農地リート、農業法人への投資

将来的には農地の流動化が進み、金融商品としての形も広がる可能性がある。

 

インパクト投資としての価値

社会課題を解決しながらリターンを得る投資として、農業・土地活用分野は注目されている。

 

今後、法整備が進めば農地の流動性が高まり、投資家が参入しやすい環境が整うことが期待される。

 

まとめ

 

耕作放棄地問題は、単なる農業の課題ではなく、日本社会全体が抱える構造問題である。しかし裏を返せば、課題が大きいほど可能性も大きい。

再エネ、地方創生、農業参入など、多くの「新たな価値創造」が期待できる分野である。

 

負の資産を未来の資源に変えられるかどうかは、制度改革と民間の活力次第である。

投資家としては、社会課題の解決と収益を両立できる稀有な領域として、今後も注目する価値があると言える。

 

 

 

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